胡蝶の夢(御手洗に行ってきた)
この日記初となる岩の記事。いや、本当はこっちがメインなんだけど。
19日に越境自粛要請が解除されたのに伴ってようやく我々も岩に行けるようになった。素直に嬉しい!!
まだまだ気は抜けないのだけど、なにはともあれフィールドに戻れたことが嬉しい。というか公園ワークだけではやっぱり物足りない。
6/20
越境自粛要請解除とともに、御手洗の他県からの往来自粛要請も解除されたので、早速☆さんと行くことにした。
こうして岩に行くのも超久しぶり・・・・感慨深いな。
☆さんが栩栩然(ククゼン)にトライするということなのでご一緒させてもらうことにした。
久しぶりの岩だし、何より久しぶりのクライミングなのでそれ程期待はしていなかったけど、やはり岩場に着くと難しいのにトライしたくなる。悲しいクライマーの性かな。
ドール、ガンプ、ターターシン、ゴワトリで一通りアップしていざ栩栩然。
構成は
実質的に核心となる両手アンダーからの魂の一手目
↓
いやらしいトラバース
↓
ゴワトリ
という感じ。最後のゴワトリでは絶対に落ちたくない。
最初は浮くので精一杯・・・
実は2年前に少しだけトライして惜しい感じになっていたのだけど、今回は全く惜しくない。流石に公園ワークでルーフアンダー引きは強化できないか・・・
2時間くらいとらいしたところでなんとなく惜しい雰囲気になってきたけど、やはり取り先に体重が乗らない。フィジカルに辛い一手だからそんなに数も打てない。
なんともJさんらしい一手だ。ハヤッシーさん曰く「京大生が頭を使わずに登った」。
それでも色々ごねごねしていたら少しずつ体重が乗るようになって、惜しい雰囲気が出てきた。
一回一回集中して全身全霊で一手出して、落ちる。結局一日中浮いて落ちてを繰り返して、左手の親指の皮がめくれて終わった。頭の血管が切れそうだ。
まだ少し時間があったのでまだやっていなかった岩魚とハリガネムシを登って終了。どちらもRock Climbing誌のインタビューで話しを聞いて以来、ずっとやりたかった課題だったから登れて満足。どちらもヒールが滑ってしっかり一回ずつ落とされたけど・・・・
内容だけ見ると苦行のような一日だったけど、何はともあれ自然の中に身をおいてクライミングできる喜びをしっかり噛み締めた一日だった。
6/27
先週の☆さん、僕に加え、家庭の自粛要請を掻い潜ってきたハヤッシーさん、タカッシーさんも合流し、久方ぶりに京都軍団4人が集結した。目指すは当然御手洗。
今週こそ栩栩然を登るという意気込みで、しっかり体調を整えてきたのだけど僕は朝から腹を下していた。大丈夫なのか?
この日の天川の気温はなんと30℃。梅雨と相まってたいそうムシムシするけど、岩に飢えた4人にはそんなことは関係ない。「あっつい」という言葉が口をついて出てくる以外は、とても気持ちよく清々しい岩日和だ。
昼から雨予報なので、さっさとゴワトリでアップしていざ栩栩然。
数回トライすると早速惜しい感じになってきて期待が持てるけど、やっぱり止まらない。前回よりも惜しい分、手が出すぎて右手人差し指を突き指した。
この突き指が良くなかったのか、スタートの右手の感触が悪くなり、一気に高度が下がってきた。この時点で13:00。そろそろ雨が降り出す予報だ。
長めのレストをとるも、どうにも感触が良くならない。また左手人差し指の皮がめくれてきて、この感じ今日は無理そうと判断して別のムーブを探ることにした。
通常こういうタイプの課題をトライする時は、変に他のムーブを探るとドツボにはまってうまく行かないので、一度決めたムーブに集中するのがいい。ただ今回は違って、別のいいムーブが見つかった。一手目の取り先が違ったのだ。
何回か手を出してみるとあっけなく一手目が止まった。すぐに滑って落ちてしまったのだけど、これなら何回でもできる。天気はまだ持ちそうだししっかりレストして繋げることにする。
ナーレはバーデントライ60日目にしてムーブを大幅に変更していた。難しい課題に取り組む場合、決めたムーブに集中する時間帯と、それ以外のより確実なムーブを探る時間帯、または日にちをきっぱり分けるのがいいのかもしれない。
一度決めたムーブを遂行する「集中力」と、よりよいムーブを探る「柔軟性」、どちらも必要ということだろう。
そんな事を思いながら繋げて、核心を再び止めて、トラバースをこなし、ゴワトリの核心で普通に落とされた。
繋げた時のゴワトリが悪い!!!
実は栩栩然、短しい系かと思いきや、ゴワトリのスタートまで6手ある。僕はムーブを変更した関係で細かい持ち替えが4手発生し、手数は10手まで膨れ上がっていた。
そこからレストなしでこなすゴワトリが別物のように悪い。いやゴワトリは元々悪い。
バーデンにフォーカスしたトレーニングと自粛期間を経て、僕の持久力はかなり減退していた。
まだまだ天気が持っているので、暫くレストしてもう一回トライ。
みたび一手目を止めて、中間部をアップアップ言いながらこなして、そしてゴワトリの核心で落とされた。
繋げた時のゴワトリが悪い!!!
これはもう無理なやつだ。コンディションがいい時にやるか、持久力を戻してからやるかしないと、ゴワトリの核心で落ちる無限ループだ。
しょぼくれていると3人が無題から戻ってきてアウトローをトライし始めたので、便乗してトライすることに。
上部がちょっと謎だったけど、我慢してジリジリ立ち込んでいったらガバカチに届いた。パワフルな前半とバランシーかつメンタリーな上部が合わさっていい課題だ。
そして気づいた、栩栩然→アウトロー抜けであればそれ程パンプしないのでは?
俄然やる気になって、長期レスト。親指の皮もあと何回かは持ちそうだったので、集中して一回で仕留めるつもりでトライ。
よたび一手目を止めてそのままアウトローまで登りきった。
栩栩然の悔しさは残るものの、嬉しい成果となった。
グレードは四段くらいだと思うけど、結局核心は栩栩然の一手目だからかなりハードルの高い四段だと思う。
最後に☆さんとOタキがアウトローを登り、タカッシーさんがゴワトリのマントルから滑り落ちて終了となった。
久しぶりの4人での岩はとても楽しかった。
自粛期間中のトレーニングを振り返って
御手洗でのクライミングをもって、自粛期間(自粛期間ってなんだ??)中のトレーニングの答え合わせとなったわけだが、いくつか気づいたことがある。
①持ってないホールドは持てない
公園ワークでやっていなかった大きめのスローパーやピンチはかなり持てなくなっていた。
弱くなったというよりも力の入れ方を忘れたと言ったほうが正確かもしれない。
なので逆に言うと暫くやると元の通り持てるようになった。
②やってないムーブはできない
公園ワークでは当然”ムーブ”たるものはやっていないので、とても動きがぎこちない。更に今回のような「アンダー引き」のような力の入れ方は最初は全くできなかった。
ジムに比べてトレーニングでカバーできる範囲は当然狭いから、思い出すのに時間がかかった。
ただ、これも暫くやるとできるようになって栩栩然の一手目もこなせた。
なので弱くなった訳ではなさそう。
③出していない力は出せない
公園ワークでは筋肥大を目的としたトレーニングをやっていたから、「数秒間全力で保持する」というようなワークをしていなかった。
そのため、ストレングス自体は今回成長を感じなかった。当然か。
あと数ヶ月筋肥大を続けて、そこから筋動員数を上げるトレーニングに切り替える予定。
④トレーニングは目的をもって割り切ってやる
ということで、わかりきっていることではあるけど「やってないことはできるようにならないし、目的外のこともできるようにはならない」
公園ワークではできることが限られているから、できるようになることの幅はかなり限られることになる。短期的な視点では忘れることの方が多いから、弱くなったように感じるかもしれない。
ただ、今回再確認したのは、そう簡単に”弱く”はならないということだ。数ヶ月という期間やらなければすぐに”忘れ”はするけど、忘れたものは何回か練習してまた思い出せばいい。
普段のジムクライミングでも、できることの幅がある程度広いだけで基本的に公園ワークとは変わらない。やってないことはできないし、やったことしかできるようにはならない!!
弱点を強化するのにはかなりのエネルギーと時間を要する。もしかするとそれ以外に手が回らなくなって、すこし弱くなったように感じるかもしれない。
自粛期間を経て弱くなってしまったと悲観する人も多いかもしれないけど、そんなことはない、自粛期間中にやったことは必ず糧になって自分のクライミングを推し進めてくれる、と言いたい。
胡蝶の夢
栩栩然(ククゼン)とは莊子の説話の一つ「胡蝶の夢」に出てくる言葉で、蝶が自由に生き生きと飛び回る様子を表現する言葉らしい。
Jさんがこの名前をあの課題に付けた理由がブログに示されている→いちゃりばちょーでー
奇しくも、僕も先日来年からの進路が決まり、ここから全力で頑張ろうと心新たにしたところだった。
ということで、栩栩然→アウトローのラインは、Jさんに敬意を評し胡蝶の夢の一節から
「蘧蘧然(キョキョゼン)」
とします。