下呂のヨクトが登れた。

 お久しぶりです。


夏が終わり、秋の訪れとともにシーズンの足音が聞こえてきました。例年通り夏は厳しい沢登りをしない限りほとんど書くことがないのですが、今年も例にもれず、易しめの沢、偵察、開拓作業等々ばかりやっていたせいでほとんど書くようなことがありませんでした。


それでも10月に入り、夜の気温が15度程度まで落ちてきてこともあり、ぼちぼちちゃんとクライミングっぽいことも始めています。


少しずつネタが溜まり始めましたし、今シーズンは先シーズンよりもだいぶ岩に行きやすい環境になったので、ある程度まとめた内容でちゃんと更新してゆく所存です。



下呂 ヨクト 五段

この課題は当時割と有名だったし、トライした人も結構いたのだが、その後大水の時に巨大な岩が出だしに挟まり、実質課題が消滅していた。


しかし、今年の夏にヒロッキーさんはじめ下呂のローカルの方の整備により巨大な岩が退き、課題が再生された。感謝しかない。


ちょうど緊急事態宣言が解除されたこともあり、☆さん、いがぐりさんがトライを開始するということだったので、便乗させていただくことにした。




課題はスタートから実質終了のカバまで僕の手順で10手。最初の4手はアプローチで、そこから体勢の悪いクロスでノブ状のキーホールドを取るところから核心が始まる。始まるといってもそこから中継を抑えてリップへの遠い一手が圧倒的核心で、リップ付近のホールドの処理は慣れれば特に問題にはならない。


中継を抑える一手、そこからリップへの遠い一手はそれぞれ二段か三段程度だが、一手前のクロスが入ることで急に難しくなる。


核心の2手の精度をとにかく上げる必要があるが、何よりノブの持ち感が大切だ。そのためにはクロスで左手のノブに入ったときの体勢が鍵になるのだが、そのためにはクロスの時の右手のホールディングが大切で・・・というように結局アプローチ部分も結構重要だということが後々判明したのであった。


クライミングではよくあることだが(ガリレオもそう言ってたよね!)ここまで顕著にそれが出る課題には久しぶりに出会った気がする。




初日にムーブはすぐにバラしたものの、シーズン初めのフニフニ指皮ではノブが持ち切れず、つなげてリップタッチが限界。


さすがに気温も湿度も高いし、しょうがないか・・・ということにした。


そうこうしているうちに、いがぐりさんが核心のキースタンスを踏み抜いてしまった。結構難しくなってしまったが、いがぐりさんが欠かさなければ僕が欠かせていたかもしれない。汚れ役を被ってくれてありがとう、いがぐりさん。





二日目は仕事終わりで、家でアップして、20:00時着。足が欠けた部分のムーブを変更して、ついでにそれ以外の部分も変更した。21:00時くらいから本気トライ開始。


前回と比較すると気温や湿度はそこまで変わらないものの、やはり指皮が固くなっているのでノブが見違えるように持てる。


時間を追うごとに周辺の結露が酷くなってきたが、扇風機とブロワーで湿気を飛ばし、一回一回集中してトライ。いがぐりさんがいてくれたおかげで気負い過ぎずいいメンタルでトライできた。


1回目はノブへの入りが悪く、核心で足が滑ってフォール。2回目もノブへの入りが悪く、リップを高速タッチしてフォール。3回目はノブへの入りは良かったものの、指皮の冷やしすぎでノブを持っている左手が痺れてしまい、すっぽ抜けてフォール。


そろそろ時間的にも指皮的にも結露的にも厳しくなってきたが、感触は良かったので最後にもう一回だけとトライ。


今度は冷やしすぎないようにケアしたおかげでノブの持ち感がよく、安定して核心をこなすことができた。リップ付近のデリケートなムーブを気合で押し切り、暗闇の中をトップアウトした。


もう二度とトライできないのではと思っていただけに、登れたのはとてもうれしい。ヒロッキーさんに報告したら「ありがとう」と言われたが、感謝したいのはこちらである。





一つ一つのムーブはそこまで難しくないが、繋げると途端に難しくなる。そういった点でかなり打ち込み系の課題だと思われる。


乾きがよく、一人でもトライできるので、東海圏で五段クラスを狙っている人にはぜひお勧めしたい課題だ。買い得感がないのもいいところだ。


そして何よりいい課題だった。再生されたことはとても意義深いことのように思う。