フィンランド遠征2022秋
ご無沙汰しております。
もはやなにか成果が上がらないと更新しないブログになってしまいましたが、一応なにかあったら更新を続けるつもりです。
見てる人がどのくらいいるのかわからないけど、文章にまとめることで思考がまとまるところもあるので、引き続きよろしくお願いします。
そんでもって、ついにフィンランドに行ってきました。目的はもちろんBurden of Dreams。
社会的混乱でなかなか渡航が難しく、ツアーが流れること実に5回。ようやく今回渡航できる条件が揃って3年ぶりにトライしてきた。
結果はご存知の通り敗退。今回はとにかく精神的に辛いツアーだった。
ただ、うまくいかなかったことが多いからこそ、今回は本当に学ぶことが多かった。
自分自身のクライミングを見つめ直すいい機会になったと思う。ということで結果は良くなかったけど、気持ちは割りと前向きです。
今のところ来年の3月に再チャレンジ予定。それまでまた頑張ろう。
10/21
同じ成田エクスプレスに乗っていたいましさんと合流して、バッテリー類も問題なく持ち込みいざフィンランドへ。
今思えばこの時点で少しテンションは低かったかもしれない。テンション低いというか、普通に緊張していた。
10/22
早朝にヘルシンキ空港に到着。ロシア上空を回避してのフライトなので、通常よりも時間がかかる。それでも何故か1時間短縮で4:00についてしまった。そんなに早くなくてもいいんだけど…
入国はすんなりいって、荷物も出てきて、あとはレンタカーオフィスが開くまでひたすら待つ。途中我慢できなくなって飲み物を購入してしまったけど、なんと500mlペットボトルで3ユーロ。円安なのでなんと450円換算。高すぎて目ん玉飛び出しそう。
8時になってオフィスへ行き、少し迷いつつもいつもの駐車場へ。ここからは楽々。
最初にマットを貸してくれるマルコの家へ。ヘルシンキ郊外のいい感じのところに住んでた。空港から20分弱。羨ましい…
会ってみるとめちゃくちゃジェントルマンで話しやすい人だった。ハンサムだし、親切だし、これは徳が高い…
マットに脚立にパモまで貸してくれた。こちらが持ってきたお土産がしょぼすぎて申し訳なくなる…
マルコの家から今度はLoviisaの宿へ。晴れ予報だけど空はどんより。フィンランドはいつもこんな感じだな。
宿は前回のところから少し港の方にいったところで、今回は家主と、もう一組のロシア人夫婦と共同だった。
荷物を置いて、ロシア人夫婦と立ち話をして、買い出ししてからちょっくらバーデンへ。
もっと森が全部なくなってるかと思いきや、バーデンの所だけピンポイントでなくなってた。
なんか様変わりしすぎてて変な感じ。でも明らかに日当たり、風通り良くなってるし、クライミング的にはプラスか…
今回は先客がいて、イタリアのエリアスが既にトライ中。ランジをやっていた。
ちょっくら触るかということでトライするも、ランジが全然できない。左手が握れない…
そもそも右手の取り先を忘れてしまったし、回転の抑え方もわからない。これは困った。
エリアスの足を真似たらいい感じだったので採用するも、やはり止まらない。
長旅で疲れているというのもあるので、ひとまず深追いせずに撤退することに。エリアスもランジは止まっていなかった。
家に帰って夕食を食べて終了。長い一日だった。
10/23
午前中はゆっくりインタビューとかして、午後からいましさんが27 clubをやりにバーデンへ。
エリアスがまた居てホールドの計測をやっていた。どうやら指を痛めたらしい。
いましさんはムーブを早々にバラして繋げにかかるも、一回目が一番良くてその後下降線。あるあるですよね。
暗くなるまでやって、3回猫パンチを繰り出したところで終了。
10/24
朝起きると喉が痛いし身体が重い。明らかに風邪を引いてしまっている。やってしまった。
それでも天気はいいし、翌日から天気が崩れる予報だったのでトライすることに。
最初にランジから。やっぱり力が入ってないのか中々止まらない。今日あわよくばと思ってただけにいきなり腰を折られた。
なんとか一回止めて下へ。
ピンチ取りもやはり悪い。ここも止めるのに何回かかかってしまったし、やっぱりギリギリ。3年間で全く成長してないな。
逆にマッチのところはかなり楽になっていた。右手が前よりも持ててるみたい。足飛ばしも前よりも楽に感じた。
それでもやはり人差し指の譲りはできない。あれだけ練習したのにガックリ。フリクションが良ければ譲らなくてもできるし、譲る方に労力割くよりは、そのまま次のピンチを取りに行く方針で練習を重ねた方が良いかもしれない。
そんでいよいよ一手目。やはり今回も止めるのに時間がかかった。最初のツアーでは3回かそこらで止めたはずなのに、月日が経って一向に楽にならないばかりか精度が下がっているのはなぜなのか。
左足を下げるという案は早々に却下。何回か一手目は止めるも、やはりいい場所にはいらない。
ムーブの精度的に、つなげるのは現実的でないだろう。気温が低すぎて体も冷え切ってるし、そもそも体調が悪い。
全ての条件が揃わないと可能性はないが、全ての条件が揃ったとして本当に登れるのか不安になる。
3年前よりも感触が悪いのは体調のせいなのか、それとも僕は弱っているのか。
絶望感漂ったところで終了。
苦しいけど受け止めざるを得ない。
10/25
レスト。夕方から雨。今後しばらくは雨予報。28の晴れ予報も怪しくなり、本当に30まで晴れないかもしれない。
気持ちが沈む。苦しい。
10/26
雨。昼頃に雨が上がり、翌日の夕方まで降らないらしいので、ボルダーを乾かしに行く。
ボルダーを拭いていると本当に気持ちが沈んでくる。今できることはこれしかないし、やってる事自体は前向きなのに、心がそれについてこない。
なぜこんなに苦しいのか自分でもわからない。
10/27
昼前にボルダーへ。少し乾かしてからお土産の買い出し。
13:00頃にボルダーに戻ると生乾きくらいの状態になっていた。
下部は比較的早く乾かすことができたので、一手目の練習から。
湿っていることもあるけど、中々止められない。
前回は最終的ほとんど振られることなく止められたのに、一体なにが違うのか。
とはいえ理由は明白だった。3年前はもっと左手が握れていた。3年前は中指の先が変色していたけど、今回はしていない。明らかに左手でコントロールできていない。
右手の持ち方を変更し、左手もフルクリンプからピンチに変えてようやく安定して止まるようになった。
これは大きな進歩だけど、全体を見れば前回のレベルに戻ったに過ぎない。
3年経って、もっと楽にこなせるようになってるはずでは??
ただ、課題を触れたことで、気持ちは少し上向いた。
どんなに情けなくても、せめて完登に向けて努力している実感は得たい。
10/28
雨。結構激しく降ったのかボルダーはびしょ濡れだった。なすすべなし。
30の晴れ予報は変化なしなので、なんとかあと一回はチャンスがありそう。せめて前回のハイポイントまでは行きたい。
10/29
雨。昼頃に上がったのでボルダーへ。
びしょ濡れだけど、予報を見るとあとは晴れ予報だし、風が出てきてたのであまり何もせずに放置することに。
あとは宿で翌日に備える。
緊張すると中々寝れない。こういう感覚になるのも久しぶりな気がする。
緊張が嫌で、そういう勝負から遠ざかっていたけど、これは絶対に避けて通れない道だ。やるしかない。
10/30
晴れ。ついに晴れた。
午前中にボルダーを見に行くと既に乾いていた。風の力は偉大だ。
一度家に帰って、食事をしてからいざボルダーへ。
アップをしてまずはランジから。
かなりいい感覚で飛び出せるが、やはり止めきれない。もうこれはわかんないな。
あまり深追いせずに今度はピンチ取り。こっちも全然だめ。前回は体調が悪かったからとか思ってたけど関係無かった。悪い。
何回かやってコツを掴んだところでやっと止まったけど、明らかにコツを掴みきれていない。
この時点で「ああ、つなげるのは無理だな」と心が折れていた。あわよくば今日にもと思っていた自分の浅はかさが恥ずかしい。
繋げに入るも、やはり一手目が当てられない。
止めるだけならいくらでも止められるけど、ほんの少し指がズレている。そしてほんの少しでもズレていると、あんなに楽な寄せが全くできなくなる。
一手目の精度自体も中々良くならない。ここの精度を上げないと、当たる回数を稼げない。
このままだと前回のハイポイントにすら到達できない。
ハイポイントに到達できないと、本当に3年間かけて微妙に弱くなっただけになってしまう。それは避けたい。
暗くなり始めたタイミングで、ようやく右手がいいポイントに入った。かなり振られてギリギリ止まった感じだったけど、これを逃すわけにはいかない。
右手の持ち直しがギリギリになってしまい、足送りも苦しい。
左を持ってきたと同時に下足が切れるも、運良く左手がいいところに入り、なんとか耐えることができた。
ただ、もはや安定してピンチを取りに行く余裕はなかった。申し訳程度に吠えながら取りに行くも、あまり体重が乗る前に落ちた。
前回のハイポイントまでは来た、ただ、惜しくはなかった。
あとは伸ばしていくだけだと意気込んだけど、このトライでかなり力を使ってしまったようで、今度は一手目が止まらなくなり、再び止まるようになった頃には既に力が残っていなかった。
結局8時まで粘るも、心と身体をすり減らしただけだった。最後はあらゆるバッテリーが尽き、身体も冷え切っていた。
それでも本当によく頑張った。やれることはやりきったと言いたい。
逆に、この課題に向けて、やっておくべき事は色々できていなかった。保持力をつけるだけで解決すると思っていたのは浅はかだった。
特に今回は精神的に前回のような勢いがなかった。それが一番駄目だったポイントのように思う。
「自分はこの課題を登るんだ」ということを100%信じきることができなかった。どこかで「今は無理だ」と思っていた。だから指が変色するまでホールドを握り込むことができなかったのかもしれない。
10/31
いい天気。今回少しでも晴れた中トライできたのはやはり幸運だったのかもしれない。
ゆっくり起きると体中が痛い。昨日相当頑張ったのかもしれない。いつもこれくらい頑張らないといけないはずなのだけど、中々そうできていなかったように思う。
昼前に出発してマルコの家へ。
マルコは家にいて、一杯お茶を頂いた。色々喋ったけど、実はマルコが思っていたのよりも10歳以上年上だったということが分かって驚いた。
「見た目の若さはそれぞれのバックグラウンドじゃないかな?」と何気なく言ってたけど、本当にそうかもしれない。
僕はどうだろうか?くたびれていないだろうか?
空港でチェックイン、出国して、ゲート近くの優雅なシートで寛いでいたらあっという間に時間になった。
フィンランドは本当にいいところだ。バーデンは早く登りたいけど、ここに来るのは苦じゃない。
今回は結果としては散々な出来だった。フィジカルもメンタルも何もかも、この課題を登るのには足りていなかった。
この課題は本当に難しい。それこそ全てを擲って挑んで、ようやく登れるか登れないかという次元だと思う。
しかし、全てを擲つことはできない。今までもそうやってきたし、これからもそうしたいから。
僕の周りの大人たちも皆そうしていた。色々な都合がひしめく中で、許される範疇でクライミングをしていた。
だから僕も許される限り、できる限り全力でクライミングがしたいし、その中で自分にできる限界に挑みたい。
しかし、この3年間はそうではなかった。
研究や仕事を言い訳に、家族を言い訳に、怠ってきた。
バーデンに挑み続けることから逃げてしまっていた。
そしてそれを自覚していたからこそ、今回はバーデンに向けてメンタルを作ることができなかった。
僕は最初から負けていたのだ。
今回の敗退で心底落ち込むかと思っていたけど、そこまででもなかった。
登れないであろうことをどこかでわかっていたから、心の準備ができていたのかもしれない。
そしてまたフィンランドに来る心の準備もできていた。
そう、登れなければ、準備をしてまたやりに来ればいい。今はまだそれができる。
ルシッドの時みたいに、やりに来たくない訳ではない。むしろまたすぐにやりに来たい。
3年ぶりにバーデンに触れて、やはりこの課題を登りたいと強く感じた。
そしてクライミングに対して割ける時間とエネルギーが限られている今こそ、落ち穂拾いではなく、本当に自分にとって重要な目標に時間とエネルギーを使いたい。