Redrock2025

いきさつ



さて、12月末でこれまで勤めた研究所を退職して、1月から富山大学の助教になった。

これはこれで人生的に一大イベントだったのだけど、それは一旦脇に置いて、今回は有給消化で行ったアメリカはRedrockのツアーについて書きたい。


有給消化で手に入った休み自体は3週間あったものの、引っ越しなどがあったためツアーに充てられたのは2週間。


行き先は色々迷った。時期的にフィンランドは厳しいし、最初検討していたスイスやフランスも天候が微妙。


ということで、休暇一ヶ月前まで迷った後に、思い切ってまだ行ったことのないRedrocksにいくことにした。



目標と事前準備

目標はSleepwalker、可能であれば初登されたばかりのShaolinも触ってみたいと思っていた。


とはいえ、仕事の引き継ぎや引っ越しの準備が忙しく、ツアー直前はあまり登れず。悲しい…


さらに本当に直前に若干指を痛めてしまった。これは単純に不注意なので猛省。


とはいえ登れない程ではないし、ふと思い立って行くことにしたツアーなので、あまり気張らず、久しぶりに色々触って楽しむつもりで出国した。



成果と所感

しかし、蓋を開けてみれば、Sleepwalkerは2日目にあっさり登れてしまい、エクステンションに当たるRetern of the Sleepwalkerも割と惜しいところまで行けた。


Sleepwalkerはリーチで得した感は否めないものの、あまり得意系でないこともあり、かなり自信につながったと思う。Return of the Sleepwalkerもあと何日かあればという感じだった。


ツアーの後半は明らかに失速していたが、これは明らかに事前準備の不足、指の故障、体調管理の失敗にあったと思う。逆に、これらをクリアできれば今後もチャンスはあるだろう。






Burden of Dreamsがなかなか上手くいっていなかったこともあり、今回のツアーの成果はとても嬉しかった。


Burden of Dreamsをトライし始めた当時、僕はV16を1本も登っていなかったし、今もちゃんと確立したものは登れていない。つまり本来V17にトライできるような立場ではないのだ。


正直かなり自信を無くしていたし、だからこそBurden of Dreamsにこだわってきた。


でも今回、Sleepwalkerが登れて、Return of the Sleepwalkerも期せずしていいところまでいけた。成果としてはそれほどでもないけど、これは数字以上に自分にとって大きかった。





今後このままボルダリングにフォーカスし続けるかはまだ決めていない。アスリートとしてはそろそろ次に進むべき時期のような気もしている。


ただ、アスリートとしての活動とは別に、Burden of DreamsもReturn of the Sleepwalkerもまたやりに行くと思う。




以下、付記としての記録

day1

Black Velvet Canyonに行って早速Sleepwalkerとご対面。

ホールドは意外と悪い。アンダーが特に悪く、体幹が弱い自分には辛そう。

すぐ上の岩で適当にアップしてからトライ。

フラッシュトライは案外アンダー寄せは出来て、中継取りで落ちた。悪くない。

すぐに全体のバラし。遠い一手は直ぐにできたものの、その後のカチへの飛ばしがパツパツな上に足が定まらなくて辛い。

最後の一手はランジだと確率が悪かったので左足のかき込みで解決。これは結構確率いい感じ。

遠い一手はピンチの中継からだとボディーが辛かったので、Drewと同じスローパーの中継を採用した。

フラッシュで出来た割にやはりアンダーの寄せはかなり悪い。右手のカチの持ち方も色々試すもどうもしっくりこない。

一応2分割くらいまでは頑張ったけど時差ボケもあったのであまり深追いはせず。

隣でwet dreamをやっていたメキシコ人のロベルトとおしゃべりして終了。メキシコでジムを経営しているらしい。


day2

目標は3手目から最後までの繋げ。

行ったときは誰もいなかったけど、少ししたら続々集まってきた。

最初に来たのがNathan Williamsで、ソルトレイクシティから通っているらしい。後で調べたらもう100日近くやってるんだとか。

次にDrewの一団が到着。めちゃくちゃ賑やかで僕は完全に空気。


ちょこっとアップしてムーブ確認から。

昨晩あまり寝れなかったので体が重く感じる。USツアーはいつもスロースタートになる傾向があるように思う。

Nathanに色々教えてもらいながらムーブをやるも、彼のbetaは僕には全然ハマらず、結局初日に作ったムーブでやることになった。

だんだん体も動いてきたので、3手目から繋げてみる。するとなんと1回で繋がってしまった。早速目標達成。

これは案外行けるのではと思い、少し休んでからスタートから繋げる。

これがまた上手く繋がってしまい、遠いスローパーが止まった。

カチへの飛ばしで若干ミスったものの、押し切って左手を寄せることが出来た。

最後のシワは完全に外してたけど、左足が残ったおかげで親指で耐えれて、少し持ち直してガバに飛ばせた。

上は幸いにも簡単で、あっという間にトップアウトしてしまった。



まさか今日登れるとは、しかも繋げ1回で登れるとは期待してなかったのでしばし呆然。

動画も写真も撮ってなかったけど、まぁいいか。

流石にV16はないと思うけど、V15にしてもだいぶ首尾よく登れたと思う。


下でロベルトやNathanと喜びを分かち合い、少し落ち着いてからReturn of the Sleepwalkerにトライ。

こっちも各ムーブバラシにそこそこ時間がかかった。上部とタイプが違いすぎる。

これはかなりやり込みが必要だな…

なんとかオリジナル部分だけでも繋げたかったけど、結局繋げれず終了。


day3

最初にShaolinから。

岩に到着してTrieste V14のホールドを触っていると地元のクライマーが来た。KangとJohnというらしい。二人ともフレンドリーでとてもいい人たちだった。

アップしてから最初にTriesteのフラッシュトライ。これは2手目で足が滑ってあっけなくフォール。

その後各ムーブをバラしにかかるも普通に悪かったので、足が滑ってなくてもフラッシュは無理だったか…

手はそこそこ良いので舐めてたけど、結構足がシビアで、手の方もミートポイントが狭くて案外繊細。

一通りムーブをやってから繋げ。

これはハマり系だと感じたので気合を入れて一回で登った。



上部が案外悪くてKangとJohnのハイパーナビゲーションでなんとか登れた感じ。慣れない岩質だとホールドの位置の見極めが難しいな。


このトライで腕が張ってしまったので、長めに休んでからShaolinにトライ。

下のV13部分が結構悪くて苦戦。Seanがサクサク登っていたから舐めてたけど、かなり肩系だった。

一通りムーブを作ってランジにもお触り。

こっちは前評判通り悪い。一応届くし体重も乗るけど、これを繋げてきて止めるのはかなり厳しく感じた。

午後からReturn of the Sleepwalkerに行くと約束していたので、深追いせずに撤収。


Return of the Sleepwalkerはこの日も激混み。Drewが居ないかわりにSimonが来た。

遅く行ったからか、到着する頃には皆もう疲れ気味だった。

Return of the Sleepwalkerのオリジナル部分なんとか繋がり、アンダー寄せまで行けた。とはいえかなりヨレてしまい、望みはあんまない感じ。

やはりやり込み系か。。。短いツアーだとかなり絶望的だ。

ただ今回はツアー前の登り込みも出来なかったし、相変わらず時差ボケであまり寝れてない割には少しは可能性を感じる。少なくともBurden of Dreamsよりは…

最後Nathanを真似て筋トレして終了。


day4

やっぱり変な時間にしか寝れず、午後の遅い時間から。

とにかく各ムーブを楽にしないと希望はないということで色々なムーブを探る。

結果細かなtipsがいくつか見つかった。ただ大幅改善とまではいかず。

試しに2回繋げてみて、なんとか中継のスローパーを止めるとこまでは行けた。ただギリギリ過ぎてまったく動けず。

最後に中継取りとスローパー取りを重点的に練習して終了。この辺はだいぶ熟れてきた。

トライできるのはあと2日。なんとかスローパーを止めるとこまでは行って、希望を繋げたい。


day5

寝れずに、結局早朝からトライ。それでもWet Dreamには人がいた。いつでも誰かいるな。

部分練習を挟みながらスタートから繋げ。

1回目でいきなりスローパー取りまで繋がった。残念ながら中継が弾け飛んでしまってあまり惜しくはなかったけど、可能性は結構感じた。

このトライで分かったけど、今のスピードだと左上腕の持久力がもたない。結局やり込んで負荷を下げていかないといけないことには変わりない。

2, 3回目は下で失敗し、4トライ目は結構いい感じで繋がるも、またもや中継が弾け飛んでしまった。

中継を上手く持てるかは結局左上腕の持久力にかかっている気もする。そこだけやれば問題なくできるし…

5トライ目も同じところまで繋がるも、今度はスローパーまで伸びれず。明らかに上腕の疲れを感じた。

諦めて部分練をするも、もはや各ムーブをこなすのもやっとな状態。流石に疲れてきたか。

トライできるのはあと1日。流石に完登は厳しいと思うけど、なんとかあと一歩と思えるところまでは行きたい。



day6

朝から雲が出ていて、気温が高め。宿の荷物を撤収してから岩場へ。早いので流石に誰もいなかった。

体を動かすと感触は悪くないものの、やはり気温が高いのと少し湿度を感じるのが気になる。

アップしてから早速繋げ。

いきなりスローパー取りまで行くも、下部でムーブの細かなミスが多く、アンダーがよれて引ききれずフォール。

続いてのトライは2回連続下部で失敗。こういうのもいつものパターンだけど、何とかしたいもんだ。

それより何よりヌメる。やはり気温と湿度が辛い。

4回目のトライで割といい感触で核心に突入するも、またもスローパーは止まらず。

5回目のトライもスローパーを叩くところでフォール。いよいよアンダーがよれてきた。

ここからは下降線の一途をたどり、やはりヨレで終了。

コンディションの割には検討したと言いたいけど、やはりツアー中の生活の乱れが効いてしまったように思う。

両指も結構痛むので、そろそろ身体的にも限界だったのかもしれない。



少し写真撮影をしてから、残りの時間で周辺の課題をやることに。

まずはWet Dream V12。散々隣で見てたおかげでフラッシュできた。最後の最後までずっと一定の難しさで、これは素晴らしい課題だ。

続いてSquaze V14。こっちは左のカチがヌメってしまい、全然ダメだった。なんとなくムーブを作って次。

最後はAtlas Shrugged V12。フラッシュは見事にムーブを読み間違えて失敗。ちゃんとムーブを作ってトライするも、今度はマントルで痛恨のフォール。

フライトの時間が迫っていたので、あまり間を開けずに最終トライ。パンパンになりながらも何とか登れた。

一回マントルで落ちたのは最悪だったけど、最後まで押し切れたいいツアーになった気がする。



急いで片付けて下山し、爆速でロサンゼルスに向かうも途中で渋滞に巻き込まれたりなんだりで結構ギリギリにチェックインした。最後の方眠むすぎてやばかった。


帰国してからも、新しい職場に行ったり、引っ越ししたりで超絶バタバタした。事前準備がしっかりしていないとこういうことになる。


ただ、反省していない訳ではないけど、こうやって貪欲にクライミングの予定を捩じ込むのは今後も続けていきたい。これをやめたらクライマーとして終わる。